就職ブレイキングニュース http://www.breaking.jp/ 就職ブレイキングニュース 2009-04-24T17:38:37+09:00 【第三十六回】経営コンサルタントの目「就職活動する学生さんのための、会社の見分け方」 by 小宮一慶 http://www.breaking.jp/column/archives/2009/04/24/entry913.html  今回は、先日、出版社のディスカヴァーさんの就職説明会で学生さん向けにお話しした、「会社を見抜く3つの質問」の話を書きたいと思います。<#IMAGE:1612:R#>学生さん向けといっても、会社の本質を見抜く質問です。今は景気が悪く、学生さんも企業を選ぶという立場にないかもしれませんが、せっかく就職するなら本当の意味で「良い」会社に就職したいもの。そのための質問です。学生さんが就職活動で企業を訪れたときに、「面談に出た相手に次の三つの質問をすると会社の内容が分かるよ」と説明しました。  まず、ひとつめは、「一番大きなお取引先さんはどこですか」という質問です。実は、一番大きな先はどこでもかまわないのです。大切なのは、そのお取引先さんを「○○会社さん」というように「さん」づけで呼んだかどうかをチェックするのです。取引を一番多くしていただいている大切なお客さまを「さん」づけしないなら、それ以外のお客さまに対してもしていないはずです。  また、「お客さま」という言葉づかいをしているかもチェックポイントだと話しました。もし、ここがだめなら、時間のムダですから、学生さんにはこの時点でその会社を出るようにと言いました。この供給過剰の時代に、お客さまを大切にする態度や言葉づかいができていない会社が、勝ち残れる可能性は低いからです。 <#IMAGE:1017:L#> 先の質問に合格したら、第二の質問です。それは、「貴社のビジョンや理念は何ですか」という質問です。これに、面接に出た担当者が「何だったかな」なんて言っているようでは、やはり面接中止で、この時点で退席したほうがよいでしょう。ビジョンや基本的な考え方が徹底していれば、だれもがそらんじて言えるはずです。そうでないなら、弱い会社ですから、今は良くても、この激動の時代を勝ち残れる会社ではないでしょう。  最後の質問は、「会社に来るのが楽しいですか」と聞くことです。そこで働いている人が楽しくないのなら、これから会社に入る人も楽しく仕事をできないのではないでしょうか。以前にも書きましたが、仕事は決して「楽(らく)」ではありません。しかし、その楽でない仕事を「楽しく」やらなければ、良い仕事はできません。働いている人が楽しくない職場から、お客さまに本当に喜んでいただけるような商品やサービスが提供できるということはありません。働く人も長続きしません。<#IMAGE:1003:R#>  待遇も大切ですが、楽しく働けるかどうかということも大切で、お金を目的にして働くと、そこそこ稼ぐと、もうこれで良いと思うようになり、仕事が荒れてきます。  これらの三つの質問は、あたりまえと言えば、しごくあたりまえのことですが、忘れてしまっている会社も少なくありません。あたりまえのことが徹底できている会社が良い会社ですね。(余談ですが、昨日発売の『あたりまえのことを バカになって ちゃんとやる』(サンマーク出版)は出版前に増刷となりました。皆様のおかげと感謝しています。)------------------------------------------------------------------ <#IMAGE:546:L#>小宮一慶(こみや かずよし) 経営コンサルタント1981年京都大学法学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行後、米国ダートマス大学経営大学院にてMBAを取得。1991年(株)岡本アソシエイツ取締役、94年日本福祉サービス(株)企画部長を経て、96年に(株)小宮コンサルタンツを設立。現在同社代表取締役。主な著書に『「1秒!」で財務諸表を読む方法』、『ビジネスマンのための「解決力」養成講座』、『明日から「仕事ができる」と言われる 新・目標達成法』、『なぜ、オンリーワンを目指してはいけないのか?』、『図解 キャッシュフロー経営』ほか多数。 ⇒小宮一慶の本 コラム 2009-04-24T17:38:37+09:00 【第三十五回】経営コンサルタントの目「若い人に刺激を与えてくれたANA機長」 by 小宮一慶 http://www.breaking.jp/column/archives/2009/02/13/entry840.html  相変わらず出張の多い毎日ですが、先日熊本へ行った機内で、ちょっとうれしいことがあったので今回はそのことを書きたいと思います。<#IMAGE:1003:R#>  その日の朝8時20分羽田発のANA便は、約280人乗りのボーイング767という中型機で、その大半、200人以上は修学旅行生でした。共学の学校でしたが、生徒の態度は良く、搭乗に際してもさほどはしゃぐ様子もなく、比較的おとなしく、でも、何か楽しそうな雰囲気がこちらにも伝わってくる様子でした。  飛行機が滑走路に出て、加速を始めると、その修学旅行生のかなりの数が驚きの声をあげました。そして、離陸すると、その子たちから拍手が聞こえました。おそらく、飛行機にそれほど乗りなれていない子供たちだなということが分かりました。  そのとき私は、学生時代、もうだいぶん前に亡くなった父が買ってくれた新幹線の乗車券を持って、新大阪駅から東京に向かう、これも今は走らなくなった0系の新幹線に乗った日のことを思い出しました。それほど新幹線に乗ったことがなかったあのとき、新大阪駅を発車した直後の加速に驚いたことをです。私の秘書は、私は昨年、新幹線に108回乗ったと言っていましたが(飛行機も70回以上乗ったらしいです)、今では残念ながら、あのときのような感動を得ることがなく、修学旅行生の歓声と拍手を聞いたときに、私が忘れてしまった感動を若い人たちが持っているのを知って、うれしくもあり、また、寂しくもある気持ちになりました。<#IMAGE:1619:L#><#IMAGE:1626:L#>  飛行機が琵琶湖上空まで差しかかったとき、機長からのアナウンスがありました。最近は短時間のフライトでは、コックピットからのアナウンスがないことも増えました。飛行機の中では落語や音楽をよく聞くので、アナウンスを邪魔に感じることも少なくないのですが、この日のアナウンスは違いました。  まず、日本語で機長のアナウンスが流れました。これは丁寧でしたが、普通のアナウンスでした。私はこのとき、「英語のアナウンスをして欲しい」と思いました。というのは、修学旅行生たちに刺激を与えてほしいと思ったからです。離陸の加速であれだけ喜ぶのなら、英語のアナウンスを聞けば、その中の何人かでも、「英語を勉強しよう」とか「機長は格好いいな。ああいう人になりたいな」と思う子が出てくるかもしれないと思ったからです。<#IMAGE:1612:R#>  はたして機長は、英語でアナウンスを続けました。そして、アナウンスの最後に、「Ladies and gentlemen, boys and girls, thank you for flying ANA」と締めくくったのです。普段は入らない「boys and girls」という言葉が入ったことで、機長も修学旅行生を意識していることがよく分かり、私は大変うれしくなりました。  私は、年長者は、自分より若い人への刺激物であるべきだと思っています。それも良い意味での刺激を与えることができれば最高です。大学で教えていますが、私は常にそのことを心がけるようにしています。景気が悪く、テレビを見ていたら、センター試験を受けている大学受験生が、「家計がしんどいので受験校をしぼる」と言っていましたが、子供たちにも不況の影響が及んでいます。こんな時期でも、私たち年長者は、それぞれの立場で、ちょっと気遣いをすることで若い人たちに良い刺激を与えることができると思います。機長のちょっとした気遣いで、私はうれしい気分で熊本空港に降りることができましたし、あの修学旅行生の中にも、少しでもうれしい気持ちを持ってくれた子がいたとしたら、何よりだと思いました。------------------------------------------------------------------<#IMAGE:546:L#>小宮一慶(こみや かずよし) 経営コンサルタント、明治大学大学院会計専門職研究科特任教授 1981年京都大学法学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行後、米国ダートマス大学経営大学院にてMBAを取得。1991年(株)岡本アソシエイツ取締役、94年日本福祉サービス(株)企画部長を経て、96年に(株)小宮コンサルタンツを設立。現在同社代表取締役。主な著書に『「1秒!」で財務諸表を読む方法』、『ビジネスマンのための「解決力」養成講座』、『明日から「仕事ができる」と言われる 新・目標達成法』、『なぜ、オンリーワンを目指してはいけないのか?』、『図解 キャッシュフロー経営』ほか多数。 ⇒小宮一慶の本 コラム 2009-02-13T19:52:35+09:00 【第三十四回】経営コンサルタントの目「立場にならないと分からないことがある・・・大相撲横綱決戦」 by 小宮一慶 http://www.breaking.jp/column/archives/2009/01/29/entry826.html  私は結構相撲好きで、休みの日など家にいるときは、夕方はたいていテレビで相撲を観戦しています。先日の大相撲初場所の横綱決戦も熱くなって見ていました。本割から優勝決定戦までの両横綱の行動も対照的で大変面白かったです。<#IMAGE:1003:R#>  本割から決定戦までの支度部屋では、朝青龍は若い力士相手に何度も何度も立ち会いの練習をしていました。本割では朝青龍が立ち合いに失敗し、白鳳が右四つ十分な体制から一気に寄り切りました。朝青龍はまったくいいとこなしでした。立ち会いの失敗がすべてでした。その白鳳は、支度部屋で目を閉じたまま、じっと神経を集中していました。一敗を追って千秋楽の本割で朝青龍に勝って追い付き、後は優勝決定戦だけ。場所前の横綱審議会の稽古総見でも完勝。本割でも完勝という状況の中、とにかく目を閉じることで神経を集中していたのでしょう。朝青龍は優勝決定戦に向けて立ち会いしか考えていなかったようにも見えます。一方の白鳳は、取組全体の流れを考えていたのかもしれません。いずれにしても好対照でした。  優勝決定戦では、今度は朝青龍が低い立ち合いから得意の左差し、そして右前みつも取り、ほぼ完ぺきな形で、朝青龍の完勝でした。白鳳を寄り切った後のあのうれしそうな顔がすべてを物語っていました。三場所連続休場で、場所前には引退などといろいろ言われた後の優勝だけに、その喜びもひとしおだったのでしょう。 <#IMAGE:1927:L#> 私は横綱決戦をもちろん熱くなって観ていたのですが、もうひとつ関心を持ったのは、NHK相撲解説の北の富士さんと、舞の海さんの解説でした。本割が終わり優勝決定戦との間に、舞の海さんは「朝青龍は、今度は立ち会いで変化するかもしれない」というような発言をされました。本割では立ち会いに失敗し完敗したのですから、確かにそういう見方はできます。体力的にも白鳳が有利ですし、以前にも朝青龍は、立ち会いにいきなり変化してけたぐりを仕掛け、横綱としての「品位」を問われたこともあったぐらいです。復活を賭けた優勝決定戦、白鳳に対して立ち会いの変化もありと、舞の海さんは考えたのでしょう。  それに対し北の富士さんは「絶対にない。相手は横綱だから」ときっぱり。横綱相手に変化するなど、横綱としてのプライドが絶対にそれをさせないということなのでしょう。そして、「低く思いっきり当たっていくのではないか」ともおっしゃっていました。果たして、北の富士さんの予想通り、朝青龍は低い立ち合いから思い切って当たっていきました。 <#IMAGE:1612:R#>  私は、理論派の舞の海さんの解説をいつも楽しみにしていますが、やはり今回は、横綱経験者である北の富士さんの予想が当たりました。横綱を経験した者でなければ、あの状態のお互いの心理状況は分からなかったのではないかと思います。ただ勝てばよいということではない。朝青龍も白鳳も、横綱としてのすべてのプライドを賭けて勝負したのだと思いました。そう言った意味で、相撲内容は別としても、本割も決定戦も観ていて大変感動的でした。私たちも、実際にその立場になった経験がないと分からないことがあるということですね。 ------------------------------------------------------------------ <#IMAGE:469:L#>小宮一慶(こみや かずよし) 経営コンサルタント、明治大学大学院会計専門職研究科特任教授 1981年京都大学法学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行後、米国ダートマス大学経営大学院にてMBAを取得。1991年(株)岡本アソシエイツ取締役、94年日本福祉サービス(株)企画部長を経て、96年に(株)小宮コンサルタンツを設立。現在同社代表取締役。主な著書に『「1秒!」で財務諸表を読む方法』、『ビジネスマンのための「解決力」養成講座』、『明日から「仕事ができる」と言われる 新・目標達成法』、『なぜ、オンリーワンを目指してはいけないのか?』、『図解 キャッシュフロー経営』ほか多数。 ⇒小宮一慶の本 コラム 2009-01-29T21:20:07+09:00 【第三十三回】経営コンサルタントの目「定額給付金になぜ反対が多いのか?」 by 小宮一慶 http://www.breaking.jp/column/archives/2009/01/13/entry818.html  明けましておめでとうございます。今年最初のコラムです。今年もよろしくお願いいたします。<#IMAGE:1612:R#>  麻生内閣の支持率が低迷し、景気対策として打ち出した定額給付金も、世論調査では大多数が反対という状況です。私は個人的には、定額給付金の配布は現在の景気の状況を考えれば、以下の理由でやったほうが良いと考えています。  まず、課税所得に達しない人にもお金を支払うことにより、低所得者層の人たちへの生活の支えとなります。所得の多い人から見ればわずかな額かもしれませんが、一家庭あたり数万円の支給は、低所得者層には小さな額ではないと考えます。  さらに、マクロ経済的にも効果があると考えます。GDPを下支えする効果を疑問視する向きもありますが、GDPは「民間消費+民間投資+政府支出+輸出−輸入」で表されます。現状を考えれば、民間消費、民間投資、輸出が振るわない中で、定額給付金を支給することは、民間消費を上昇させる効果があります。 預金されるだけという意見もありますが、限界消費性向の高い低所得者層ではほとんどが消費に回りますし、期限付きのクーポン券などで配れば、預金されることはありません。  また、クーポン券は、新たに紙幣を刷るのと同様、ハイパワードマネーですから、マネーサプライを増加させる効果もあります。  ただし、名目金利がゼロに近い現状では、ハイパワードマネーを増加させても、金融政策の有効性が低い、いわゆる「流動性のわな」に陥りやすく、金融的には効果が少ないかもしれません。しかし、そうした中では、財政支出を増大させ続けることぐらいしか景気刺激策が見当たらなく、定額給付金を配ることは即効性があると考えられます。(この説明にはもう少し紙面が必要ですが、ここではこれくらいにします。詳しく勉強されたい方は、弊社「マクロ経済分析セミナー」にご参加ください。あと数名参加可能です。)<#IMAGE:1003:C#>  先日、街を歩いていたら、ある政党が「定額給付金を配るお金があるなら、僻地に病院を建てるなどに使ったほうが良い」と街頭で演説していました。確かに、何に使ったら良いかと聞かれれば、僻地の病院のほうが良いかもしれません。 しかし、経済対策の即効性という観点からは定額給付金のほうが全国的な経済底上げ効果は高いと考えられます。また、多くの中小企業を見ている私の立場からは、即効性のある景気対策が望まれることは言うまでもありません。 <#IMAGE:1913:L#> しかし、ここまでこの定額給付金が反対される理由は、麻生首相のリーダーシップや言動に問題があると考えられます。誤解をあえて承知の上で述べさせてもらえば、国民の大半は定額給付金の経済効果については理解していないと思います。それほど詳しく経済や金融の仕組みを知らないからです。そういう現状で新聞社などが世論調査で定額給付金の経済効果を聞いても正解は得られません。 「鳥インフルエンザにタミフルは効くか」と聞かれても大半の国民は分からないのと同じです。  ばらまきは国民への人気取りだという批判もありますが、再選の見込みのないブッシュ政権は昨年5月に各家庭に500ドルの小切手を配る定額給付を早々に実施しています。リーダーの問題で やろうとしていることが実行できないならリーダーが代わるべきでしょう。これは、企業でも同じことだと思います。 ------------------------------------------------------------------<#IMAGE:546:L#>小宮一慶(こみや かずよし) 経営コンサルタント、明治大学大学院会計専門職研究科特任教授 1981年京都大学法学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行後、米国ダートマス大学経営大学院にてMBAを取得。1991年(株)岡本アソシエイツ取締役、94年日本福祉サービス(株)企画部長を経て、96年に(株)小宮コンサルタンツを設立。現在同社代表取締役。主な著書に『「1秒!」で財務諸表を読む方法』、『ビジネスマンのための「解決力」養成講座』、『明日から「仕事ができる」と言われる 新・目標達成法』、『なぜ、オンリーワンを目指してはいけないのか?』、『図解 キャッシュフロー経営』ほか多数。 ⇒小宮一慶の本 コラム 2009-01-13T23:45:00+09:00 【第三十二回】経営コンサルタントの目「米国金融危機から学ぶべきこと」 by 小宮一慶 http://www.breaking.jp/column/archives/2008/09/24/entry797.html  米国では証券会社のリーマン・ブラザーズが破たんし、<#IMAGE:1612:R#>保険最大手のAIGも破たん寸前まで追い込まれ政府が救済するという、1997年以降の日本の金融危機に酷似した状況となっています。97年の日本では、三洋証券、山一證券、北海道拓殖銀行が11月に一気に破たん、98年に入り日本長期信用銀行、日本債券信用銀行も次々に破たんしました。また、97年には、タイで発生した流動性危機が韓国、インドネシアに瞬く間に飛び火し、アジア経済危機が起こるという最悪の状況となりました。  その後、金融危機は沈静化し、21世紀に入り、米国ではITバブルの崩壊はあったものの、米国、欧州、そして少し遅れて日本も比較的堅調に経済が拡大しました。特に米国や英国では不動産バブルが起こり、それにファイナンスをつけていた金融機関も業績を一気に拡大しました。また、ご存じのように、不動産ローンを証券化したり、金融工学を駆使したデリバティブ商品を売買することで、金融機関は業績を格段に向上させました。その中で、本来は貸せないはずの低所得者層向けのサブプライムローンおよびそれを証券化した商品も、儲けられる金融商品として残高が急拡大、ローンが出るからさらに住宅価格が上がり、バブルがさらに大きくなるという現象が起きました。 <#IMAGE:1003:C#>  しかし、ご承知のようにバブルが崩壊し、それを前提としていた金融商品も価格が急落、中には不払いとなるものも出て、金融機関も大きく傷ついてしまったのです。  1980年代後半に日本で土地バブルが起こったときには、まず、海外の経済学者やエコノミストたちが警告を発し始めました。しかし、日本国内では景気が良いものですから、その議論は無視され続けました。そしてバブルが崩壊した直後にも、海外からは、その損失額は100兆円に上るだろうという予想が出されたにも関わらず、当初は国内ではそのダメージを小さく見て、結果的に対応が遅れ、97年の金融危機に結びついたと言えます。 <#IMAGE:1017:L#> 同様に米国でも、住宅バブルに対し、特に日本の土地バブル崩壊を知っている人たちからは警告が発せられていましたが、長らく無視されていました。そして、昨年8月にサブプライム問題が露呈したときにも、その影響を軽く見たために、今回の危機を招いたのです。当初から有識者の中には、米国金融機関への公的資金の投入を訴えていた方がおられましたが、その見解が正しかったわけです。  私はここで経済理論の話をしたいのではありません。失敗をしているにも関わらず、同じ過ちが繰り返されるということを言いたいのです。どんなに金融理論やコンピュータが発達しても、所詮人間が作るものに完璧はありません。 また、人は欲望や感情の動物です。それが、よけいに人の目を曇らせます。そういうことを考え合わせれば、また、いつか、どこかでバブルが発生し、それが崩壊する日がくると思います。私たちひとりひとりは、常識という目を持ち、欲望に目を曇らせないようにしたいものですが、なかなか難しいのも現実ですね。 ------------------------------------------------------------------ <#IMAGE:546:L#>小宮一慶(こみや かずよし) 経営コンサルタント、明治大学大学院会計専門職研究科特任教授 1981年京都大学法学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行後、米国ダートマス大学経営大学院にてMBAを取得。1991年(株)岡本アソシエイツ取締役、94年日本福祉サービス(株)企画部長を経て、96年に(株)小宮コンサルタンツを設立。現在同社代表取締役。主な著書に『「1秒!」で財務諸表を読む方法』、『ビジネスマンのための「解決力」養成講座』、『明日から「仕事ができる」と言われる 新・目標達成法』、『なぜ、オンリーワンを目指してはいけないのか?』、『図解 キャッシュフロー経営』ほか多数。 ⇒小宮一慶の本 コラム 2008-09-24T18:25:00+09:00 【第三十一回】経営コンサルタントの目「福田首相退陣と間接選挙の限界」 by 小宮一慶 http://www.breaking.jp/column/archives/2008/09/11/entry792.html  福田首相が突然の退陣を発表しました。<#IMAGE:1612:R#>安倍前首相に続き、二人の首相が任期途中に突然退陣という異常な状況です。福田首相の退陣の記者会見などを聞いていると、このままの状況では政権運営が十分にできないので自分は辞めるとおっしゃっているように感じられます。民主党の小沢代表が自分の話を聞いてくれないといった発言もありました。福田首相の発言は、とても日本国の首相としての発言ではないと私には思えます。  自民党を救うために自分が辞めると言っているのと同じだからです。自分が総裁をしていては次の選挙に勝てないから辞めるというのは、自民党の人から見れば有難い発言かもしれませんが、自民党の総裁は、現在では日本国の首相となるわけで、日本国民から委託された首相としての職務に関しては、「放り投げた」と言われても仕方のないことです。無責任極まりないとしか言いようがありません。企業の社長で任期途中にあのような辞め方をする人はまずいないでしょう。 <#IMAGE:1017:L#>  首相という仕事は、国民を幸せにすることにあります。その仕事を行う決意と意思が必要です。その決意と意思があったからこそ首相になったのだと思いますが、それならば、それを全うすべきです。もし、民主党がそれに邪魔をするなら、自分の志をきちんと主張し、総選挙に打って出れば良いのです。新聞の世論調査の内閣支持率の数字が悪ければ、それも自分の志や施策を国民にきちんと知らせ、総選挙で信を問うべきです。それもせず、自分と自民党の都合だけで政権を投げ出すのなら、最初から引き受けなければ良いのです。国民の幸せより、自分を首相にしてくれた自民党のことしか考えていない器量の小さい人間が何代か首相をしてしまったということでしょう。  しかし、彼らを非難するだけでは何も変わりません。大切なことは彼らのような人間を首相に選んでしまう現在のシステムが間違っているということを認識することです。つまり、間接民主制が間違いなのです。この国では、誰も望んでいない人が首相になる確率が高く、現実そうなって不幸な結果が続いているのです。安倍首相も、福田首相も皆さんが支持した首相ですか。私は違います。しかし、今の議院内閣制ではだれが首相になるかを国民は選べないのです。 <#IMAGE:1003:R#> 首相を選ぶ国会議員がしっかりした人ばかりなら心配は要りませんが、上っ面だけ良くて実力のない二世、三世議員、小利口な役人上がり、それに恰好だけのタレントばかりが目立つ議員にまともな首相を選べるとはとても思えません。  これを打破するには私は「首相公選制」が望ましいと考えています。各都道府県の知事は直接選挙で選ばれていますが、個性のある面白い人が知事になっています。首相を公選にすれば、人気取りばかりの衆愚政治になるとの批判もありますが、現状を考えれば今よりはずっとましだと思います。もちろん、これには憲法改正が必要となりますが、憲法第九条改正よりも私は優先度が高いと考えます。皆さんのご意見をお聞かせください。 ------------------------------------------------------------------<#IMAGE:546:L#>小宮一慶(こみや かずよし) 経営コンサルタント、明治大学大学院会計専門職研究科特任教授 1981年京都大学法学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行後、米国ダートマス大学経営大学院にてMBAを取得。1991年(株)岡本アソシエイツ取締役、94年日本福祉サービス(株)企画部長を経て、96年に(株)小宮コンサルタンツを設立。現在同社代表取締役。主な著書に『「1秒!」で財務諸表を読む方法』、『ビジネスマンのための「解決力」養成講座』、『明日から「仕事ができる」と言われる 新・目標達成法』、『なぜ、オンリーワンを目指してはいけないのか?』、『図解 キャッシュフロー経営』ほか多数。 ⇒小宮一慶の本 コラム 2008-09-11T21:51:00+09:00 【第三十回】経営コンサルタントの目「米国経済の現状」 by 小宮一慶 http://www.breaking.jp/column/archives/2008/08/26/entry789.html <#IMAGE:1003:R#> 北京オリンピックが終わり、中国経済の今後に対する懸念や見通しが、新聞や雑誌で多く論じられています。確かに、8%台から6%台にまで下がっているものの、依然高いインフレ率は、格差社会を助長し、そのことが、頻発する暴動の大きな原因となっています。一方、そのインフレを抑えるために、人民元レートを高めに誘導すると、今度は、頼みの綱の輸出が減少し、大きな矛盾を抱える中国経済の均衡をかろうじて維持している高成長を脅かすことなど、中国経済への先行き懸念は決して小さくありません。  しかし、米国経済も中国経済同様深刻な問題を抱えていることを忘れてはなりません。世界のGDPの約4分の1を占める米国経済は、かなり「危うい」状況にあると言えます。今回は米国経済の私なりの現状分析をお話ししたいと思います。昨日の日経新聞の「景気指標」を使ってご説明しましょう。もし手元にあればご覧ください。(なくても大丈夫です。)  まず、昨年8月に表面化したサブプライム問題で大打撃を受けている住宅に関しては、「新設住宅着工」が7月の数字で前年比マイナス29%、年換算の着工数が96万5千戸と、2005年の206万8千戸の半分以下となっています。住宅に関しては、価格の下落とともに、着工の回復の兆しがまったく見えない状況です。 <#IMAGE:1017:L#> さらに、雇用も大きく減退しています。まず、「非農業部門雇用数の増減」です。月15万人(年換算180万人)増加が景気の良し悪しの目安とされていますが、2005年、06年、それぞれ、1年でプラス253.2万人、209.9万と合格点だったのが、07年には年後半の急減速があり、プラス109.6万人まで急減、そして08年に入ってからは、月ごとの雇用数が、7ヵ月連続でマイナスという「異常事態」となっています。雇用が減少しているのは、住宅、金融、自動車などです。そして、以前は4%台だった失業率は5.7%へと増加しています。  ともに個人消費に大きな影響を及ぼす住宅価格の上昇と雇用ともに赤信号の状態が続いています。米国政府は5月から減税のための小切手を各家庭に配っていますが、その効果もそろそろ息切れの懸念が出ています。 こんな中、米国の中央銀行であるFRBは、手を打てない状況にあります。<#IMAGE:1010:R#>サブプライム問題発覚以降、5.25%だった政策金利を短期間に2%にまで低下させたものの、金融危機は収まらず、また、景気後退懸念が大きく残ったままの状態で、やっかいなことにインフレが進みつつあります。直近の数字で消費者物価で年率5.6%、卸売物価では9.8%にまで上昇しており、インフレへの対応が急務です。しかし、景気の現状を考えれば、利上げは難しく、かといって利下げもこのインフレでは難しいという、どうにもできない手詰まり状態となっているのが現状です。  原油や資源価格の高騰がひとまず収まったかたちとなり、米ドルが買い戻されていますが、米国経済の状況が、予断を許さない状況にあることは変わりなく、当面、住宅、雇用、インフレ率などの指標から目が離せない状況となっています。ユーロ圏経済、日本経済も弱含みですが、資源価格の再高騰などがあれば、ドル暴落という可能性もあるので注意が必要です。 ------------------------------------------------------------------ <#IMAGE:1612:L#>小宮一慶(こみや かずよし) 経営コンサルタント、明治大学大学院会計専門職研究科特任教授 1981年京都大学法学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行後、米国ダートマス大学経営大学院にてMBAを取得。1991年(株)岡本アソシエイツ取締役、94年日本福祉サービス(株)企画部長を経て、96年に(株)小宮コンサルタンツを設立。現在同社代表取締役。主な著書に『「1秒!」で財務諸表を読む方法』、『ビジネスマンのための「解決力」養成講座』、『明日から「仕事ができる」と言われる 新・目標達成法』、『なぜ、オンリーワンを目指してはいけないのか?』、『図解 キャッシュフロー経営』ほか多数。 ⇒小宮一慶の本 コラム 2008-08-26T23:59:00+09:00 【第二十九回】経営コンサルタントの目「夏雑感」 by 小宮一慶 http://www.breaking.jp/column/archives/2008/08/12/entry785.html 今回は、雑感ふうに書き進んでいくことにします。 まず、北京オリンピックが始まりオリンピックムードが盛り上がっています。<#IMAGE:1003:R#>日本選手が出場すると、やはりテレビを見ていても力が入ります。予想通りの活躍をした選手がいる一方で、期待に応えられなかった選手がおり、また、メダルを取っても満足できない選手がいる一方で、メダルには届かなかったものの、自己ベストを出し、すがすがしい表情を見せている選手もいます。やはり、大舞台でもどんな時でもベストが出るかどうかということが大切だという気がします。高校野球も試合が進み、郷土のチームでなくとも暑い中精いっぱいのプレーを見ていると、どちらのチームということなく応援したくなります。やはり、ベストを尽くす姿は、見ているほうも心地よいものです。  一方、今週は休暇を取っている方も多いらしく、通勤電車に乗っていても、普段よりずいぶん空いている感じがします。(その分、新幹線は混んでいて、この原稿も東京発の下りののぞみの中で書いていますが、グリーン車も満席といった状況です。)このところのガソリン価格の高騰で、通勤を電車に変えている人も少なくないらしく、電鉄会社の方から聞いた話では、定期券の売上げが上がっているとのことです。 <#IMAGE:1017:L#> 日本経済で言えば、今週は、13日に4−6月のGDPの発表がありますが、大方の予想ではマイナス成長となる可能性が高いようです。GDPだけではなく、有効求人倍率などの雇用、百貨店売上高などの消費の数字も、悪化しているものが多く、経済の減速感は否めません。インフレも進みつつありますが、値上がりの原因が、原油をはじめとする輸入品の価格上昇で、値上がりで得た収益の大半が海外へ逃げていくという状況では、当面経済の回復は望み薄といった状況です。  最後に、少し宣伝になって恐縮ですが、先週『お金を知る技術 殖やす技術』(朝日新書)を出版しました。サブタイトルが「貯蓄から投資にだまされるな」としました。投資をまったく否定しているわけではりませんが、なんでもかんでも投資という風潮に私は大いに疑問を持っています。 <#IMAGE:1682:R#>個人レベルでは、投資をして良いお金(「攻めるお金」)と、してはいけないお金(「守るお金」)を分けて考えるべきであること、日本人は一般に言われているように必ずしも株式嫌いではないこと、「攻めるお金」を本当に殖やす方法は投資信託を買うのではなく個別銘柄の株式を長期保有で買うこと、マクロ経済レベルでは、貯蓄から投資が進めば企業金融をおかしくすること(新株でない株を証券会社経由でいくら買っても、企業にはお金は入りません。むしろ、貯蓄が減る分、間接金融が回らなくなります)、などを説明しています。ぜひ読んでみてください。  この本は、今年5冊目の出版で、「休みを取っているのか?」とよく聞かれますが、ご心配なく。3年ぶりに1週間の休暇を取り、ハワイに行ってきました。マウイ島の海や星空も最高でしたが、大学生になった息子とふたりで、ワイキキからダイヤモンドヘッドのクレーターまで歩いたことも、暑かったですが良いリフレッシュとなりました。(余談ですが、JALでひとり4万円の燃油サーチャージや日米の経済減速もあり、米国本土からの旅行者が前年比16%、日本からの旅行者が10%減少しているとのことです。) ⇒『お金を知る技術 殖やす技術』------------------------------------------------------------------<#IMAGE:546:L#>小宮一慶(こみや かずよし) 経営コンサルタント、明治大学大学院会計専門職研究科特任教授 1981年京都大学法学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行後、米国ダートマス大学経営大学院にてMBAを取得。1991年(株)岡本アソシエイツ取締役、94年日本福祉サービス(株)企画部長を経て、96年に(株)小宮コンサルタンツを設立。現在同社代表取締役。主な著書に『「1秒!」で財務諸表を読む方法』、『ビジネスマンのための「解決力」養成講座』、『明日から「仕事ができる」と言われる 新・目標達成法』、『なぜ、オンリーワンを目指してはいけないのか?』、『図解 キャッシュフロー経営』ほか多数。 ⇒小宮一慶の本 コラム 2008-08-12T13:42:34+09:00 【第二十八回】経営コンサルタントの目「だれも得しなかったタクシー値上げ」 by 小宮一慶 http://www.breaking.jp/column/archives/2008/07/29/entry780.html  首都圏では、昨年暮れにタクシー運賃の値上げがありました。<#IMAGE:1003:R#>初乗り運賃が660円から710円になり、距離のワンメーターも80円から90円に値上げになりました。そして、私がびっくりしたのは、10時から「深夜」料金となり、2割増となりました。私のように地方出張で東京に帰着する時間が結構遅い人間にとっては、メーターの値上げと深夜割り増しで、10時過ぎに乗ると3割値上げと同じになります。タクシーでそのことを運転手さんに言うと、「これまで11時以降に乗っていた人は、3割が2割に下がったので、得しています」ということですが、深夜遅くまで、次の日の仕事のことも考えず、自分の身体のことも考えない「お気楽な」人間が得をし、私のように夜更かしもせず、夜遅くまで働く人間が損をするのはおかしいと思っています。だいたい10時が「深夜」なんてどう考えてもおかしいですよね。  まあ、自分のことはさておいて、今回の値上げは、運転手さんの待遇を改善するためというのが、主な目的であったはずです。しかし、実際には、運転手さんの賃金は上がっていません。むしろ下がっているはずです。なぜなら、値上げ後、タクシーの売上げが落ちているからです。ですから、歩合で給料をもらう運転手さんの賃金は下がっています。  <#IMAGE:1010:L#>これは、経済学を学ぶときに真っ先に学ぶことのひとつ、 「需要の価格弾力性」で簡単に説明がつきます。需要の価格弾力性とは、たとえば1%モノやサービスの価格が値上がりしたときに、どれだけ需要が減少するのかということです。1%の値上げに対して、需要の減少が1%以下なら売上げは増えますが、売り上げの減少率が1%以上なら、値上げしても、結局、売上げは下がります。  経済学的には、必需品に関しては、需要の価格弾力性は小さく、ぜいたく品や代替物がある場合には、価格弾力性が大きいと言われています。所得が伸びず、企業業績が落ち始めている中でのタクシー料金の値上げでしたから、価格弾力性が大きかったと言えます。特に、10時台の時間帯に関しては、実質3割の値上げで、なおかつ首都圏では電車も十分に走っている時間帯ですから、値上げの影響は大きいと推測できます。<#IMAGE:1612:R#>  いずれにしても、今回の値上げは、利用者も運転手さんもタクシー会社も誰も得しないという悲惨な結果に終わりました。景気が今後さらに冷え込むことを考えれば、倒産するタクシー会社も出るでしょう。これは、明らかに政策の失敗です。本当は、この時期には、値上げをするのではなく、タクシー台数を削減すべきだったのです。そうすれば、一台あたりの売上げは上がり、運転手さんの待遇が改善するとともに、利用者には値上げの不利益を与えることはなかったのです。台数が少々減っても、これだけタクシーが過剰なら、拾えなくなるということはまず考えられません。  政府は、今になって台数削減を考えているようですが、簡単な経済学を無視し、だれの利益にもならなかった政策の誤りを率直に認め、国民の利益となる政策を行うことが必要なことは言うまでもありません。企業はお客さま第一、政府は国民第一で政策を行うのは当然です。小宮一慶氏の著作はこちら<#IMAGE:1619:L#><#IMAGE:1626:R#>「1秒!」で財務諸表を読む方法          ビジネスマンのための「発見力」養成講座 ------------------------------------------------------------------ <#IMAGE:469:L#>小宮一慶(こみや かずよし) 経営コンサルタント、明治大学大学院会計専門職研究科特任教授 1981年京都大学法学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行後、米国ダートマス大学経営大学院にてMBAを取得。1991年(株)岡本アソシエイツ取締役、94年日本福祉サービス(株)企画部長を経て、96年に(株)小宮コンサルタンツを設立。現在同社代表取締役。主な著書に『「1秒!」で財務諸表を読む方法』、『ビジネスマンのための「解決力」養成講座』、『明日から「仕事ができる」と言われる 新・目標達成法』、『なぜ、オンリーワンを目指してはいけないのか?』、『図解 キャッシュフロー経営』ほか多数。 コラム 2008-07-29T22:40:00+09:00 【第二十七回】経営コンサルタントの目「米国の個人消費動向に注意が必要」Powered by 小宮一慶 http://www.breaking.jp/column/archives/2008/06/10/entry764.html 今回は経済のお話をしましょう。私が今、最も注意して見ている米国の経済指標は個人消費です。今のところ前年比プラス4.8%ですが、今後これがどこまで落ちるかが問題です。米国の実質GDPは1−3月で0.9%のプラス、その前の四半期は0.6%と、ゼロ成長ギリギリにまで落ちています。それでも、個人消費の伸びは前年比で5%程度ありました。ということは、個人消費以外の、住宅投資の伸びなどが大きく鈍化したことが、米国のGDPを押し下げていたのです。 <#IMAGE:1010:L#>  米国のGDPの約70%を占めているのが個人消費です。これがさらに落ちることがあれば、米国はかなり高い確率でマイナス成長となります。ブッシュ政権は、1.5兆ドル(約16兆円)の減税を実施し、中間層以下の各家庭に6百ドル程度の小切手を5月から配り始めましたが、大方の予想ではそれでは個人消費を大きく刺激することは難しいと考えられています。  近年米国の個人消費を支えていたものに、住宅価格の上昇がありました。2006年半ばあたりまでの10年間で約5割の上昇でしたが、その後下落をはじめ、過去1年間では15%の下落です。日本人はめったにやりませんが、米国では自分が住んでいる家の価値が上がれば、住宅ローンを借り換える人が結構います。担保価値が増えるので、給料などで返せる範囲で借り増しをし、それを現金化(「キャッシュアウト」という)して、海外旅行に行ったり、車を買ったりするのです。そのキャッシュアウトによる消費が、米国の個人消費を約7%押し上げていたという試算もありますが、それが逆回転し始めています。 <#IMAGE:1003:R#>住宅着工数は、05年の200万戸超から、07年には130万戸台まで落ち込んでいます。月ベースでは年換算で100万戸台です。さらに、雇用も今年に入り、5ヶ月連続でマイナスという状況です。失業率も上がり始めました。こうしたことを考えれば、個人消費はさらに減少することが予想されます。  一方、米国の旺盛な個人消費は、その裏側として、膨大な貿易赤字を生んでいました。その額、年間約8千億ドル(約84兆円)です。日本が約1千億ドル、中国が約2千6百億ドルの貿易黒字国であることを考えれば、米国の貿易赤字がいかに膨大か分かります。また、日本、中国の国全体の貿易黒字額が、だいたい米国の対日、対中赤字額で、米国の個人消費が落ち始めると、日本、中国の貿易黒字が減り、日中両国の経済に少なからぬ影響を与えることを私は懸念しています。日本経済は円安要因もなくなり輸出に頼っていた経済成長は鈍化します。中国もチベット問題、四川の大地震問題などを抱えている上に、現在は8%を超えるインフレで、格差問題がよりクローズアップされている状況です。こうした状況の中、米国の個人消費減少による経済の減速が日中両国へ与える影響は小さくないでしょう。  いずれにしても、この先数カ月は、米国の個人消費、雇用、住宅着工数の動きには注意が必要です。小宮一慶氏の著作はこちら <#IMAGE:1017:C#> ------------------------------------------------------------------ 小宮一慶(こみや かずよし) <#IMAGE:546:L#> 経営コンサルタント、明治大学大学院会計専門職研究科特任教授 1981年京都大学法学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行後、米国ダートマス大学経営大学院にてMBAを取得。1991年(株)岡本アソシエイツ取締役、94年日本福祉サービス(株)企画部長を経て、96年に(株)小宮コンサルタンツを設立。現在同社代表取締役。主な著書に『なぜ、オンリーワンを目指してはいけないのか?』、『成功する上司』、ベストセラー『図解 キャッシュフロー経営』ほか多数。 コラム 2008-06-10T20:29:29+09:00 【第二十六回】経営コンサルタントの目「社員旅行と意味と意識」Powered by 小宮一慶 http://www.breaking.jp/column/archives/2008/05/30/entry762.html 先週、ある顧問先さんの社員旅行で台湾に4泊5日で行ってきました。この会社の取引先がある台湾南部の高雄と台北で2泊ずつを過ごしました。ちょうど馬英九新総統就任の日と重なり、高雄で泊まったホテルで就任パーティの一部が行われるなど、新幹線やホテルでは警備が厳重でしたが、私にとっては大いにリフレッシュでき楽しい時間を過ごせました。この会社では2年に一度、社員全員で海外旅行を行っており、今回は、社内を4班に分けての社員旅行でした。<#IMAGE:1003:R#>  「社員旅行なんて古くさい」とか、「若い人が喜ばない」、「費用が大変」という意見をいう人もいますが、私はそうは思いません。 この会社の社員旅行では、若い人も多く参加していますし、皆、各自でエンジョイしていると思いました。「若い人は喜ばない」と言っているのは、「若い人は会社が嫌い」と言っているのと私は同じだと思います。家族や好きな人となら喜んで旅行に行く人が、会社では行かないというのは、会社が嫌いだからではないでしょうか。 少なくとも好きではないのでしょう。社員が、好きでない会社に勤めているなんて会社にとってもその社員や周りの社員にとっても不幸なことですね。  会社を、お金を稼ぐだけの「ドライ」な場所だと考えれば、旅行なんて、ということになります。しかし、会社で自分を伸ばし、会社の仲間と一緒に幸せを感じている人なら、友達と行くのと同じように、会社の旅行も喜んで参加するのではないでしょうか。しかも費用の大半を会社が出してくれるのですから、会社を好きな人にとっては大変ラッキーなことです。   少し、違った視点から考えてみましょう。私は、組織が強く、活性化するには、「意識」の共有が必要だと考えています。通常、業務で部下や同僚には「意味」を伝えています。「コピーを百枚とってください」、「A社を訪問してほしい」というのは、「意味」です。その意味を聞いて、積極的に人が動いてくれるかどうかは、実は「意識」の共有ができているかが大きなポイントです。<#IMAGE:1010:R#>皆さんも、Aさんから言われると喜んでやるが、Bさんから同じことを言われたらいやいややる、あるいは、やりたくないという経験はないですか?これは、同じ「意味」のことを言われても、「意識」の共有の違いによるものです。日頃から意識が共有されていれば、意味は伝わりやすいのです。経営の現場にいて、「コミュニケーション不足」ということをときどき耳にしますが、これは、「意味」の伝え方が悪い場合だけでなく、実は「意識」の共有がなされていないことが原因の場合も少なくありません。意識が共有されていれば、言葉は少なくても、「以心伝心」、「阿吽の呼吸」で意味が伝わるものです。  メールが普及し、毎日「意味」ばかりがやたらにやってきます。メールは文章ですから、意味を伝える道具としては非常に便利です。しかし、その分、意識は伝わりにくい。ネット全盛の時代だからこそ、飲み会や社員旅行といった意識の共有のための取り組みも必要なのではないでしょうか。 小宮一慶氏の著作はこちら <#IMAGE:1017:C#> ------------------------------------------------------------------ 小宮一慶(こみや かずよし) <#IMAGE:546:L#> 経営コンサルタント、明治大学大学院会計専門職研究科特任教授 1981年京都大学法学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行後、米国ダートマス大学経営大学院にてMBAを取得。1991年(株)岡本アソシエイツ取締役、94年日本福祉サービス(株)企画部長を経て、96年に(株)小宮コンサルタンツを設立。現在同社代表取締役。主な著書に『なぜ、オンリーワンを目指してはいけないのか?』、『成功する上司』、ベストセラー『図解 キャッシュフロー経営』ほか多数。 コラム 2008-05-30T17:42:09+09:00 【第二十五回】経営コンサルタントの目「小さな習慣の積み重ね」Powered by 小宮一慶 http://www.breaking.jp/column/archives/2008/04/22/entry745.html  先週、講談社さんから『明日から「仕事ができる」と言われる新・目標達成法』を出版しました。私にとっては36冊目の本となります。その本で強調したかったことが二つあります。ひとつは、今週のメルマガのテーマでもある「小さな習慣の積み重ね」ということです。この本は、目標達成のための、「目標具体化力」、「時間管理力」、「仕事力」、「人を動かす力」をそれぞれ高めるためには何をすればよいかということを書いたものですが、私の周りで仕事ができ、成功している人や、私なりの経験、習慣を説明したものです。 <#IMAGE:1003:R#>  例えば、目標具体化力を高める方法として、「(年間目標を落とし込んだ)月間目標を立てる」、「月末には預金残高を確認する」、時間管理力、仕事力については、「1次会には行くが、2次会には行かない」、「英語は歩きながら暗記した文章をぶちぶち唱える」、「休みの日には1時間だけ将来のために時間を使う」など、20足らずの「小さな習慣」を説明しています。  成功している人を見ていると、行動が安定しています。つまり、同じことを繰り返し継続して行なっています。「これだ」と思ったことが続きます。いつも申し上げていることですが、人が成功するかどうかは、「正しい努力」を「紙一重の積み重ね」でコツコツと積み重ねられるかどうかがキーです。 まず、「なりたい自分」、「なれる最高の自分」になるために何が必要な正しい努力なのかを認識し、そしてそれを「継続」することです。続けなければせっかくの行動も実を結ばないのです。 <#IMAGE:1010:L#>  そして、もうひとつ、本で強調したかったことは、小さな習慣とともに「考え方」の重要さを分かっていただきたいことです。若いうちはとかく「技」や「ノウハウ」が重要だと考えがちです。私は、技やノウハウを軽視しているのではありません。これらがなければ仕事はできません。いわば必要条件なのです。しかし、これだけでは不十分で、もうひとつ必ず必要なのは考え方です。 特に、社会的地位が上がれば上がるほど必要なのがしっかりとした考え方なのです。  若いうちは考え方の重要性がなかなか分からないかもしれませんが、地位が上がれば上がるほど必要なのは「正しい」考え方です。考え方という土台の上に、技が乗るわけですが、技の部分は部下に任せることもできますし、場合によっては外部の人をお金で雇ってカバーすることも可能です。しかし、考え方はそういうわけにはいきません。自分なりのしっかりした考え方を持つことが必要です。  これも、中国の古典など良い本をたくさん読んで、自分なりのバックボーンを身に付けた上で、小さな習慣を積み重ねることだと私は思っています。『新・目標達成法』がお役に立てばうれしく思います。  余談になりますが、ここ半年ほどの間に出した、 『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『「1秒!」で財務諸表を読む方法』(東洋経済新報社)はそれぞれ刷り部数で10万部を超え、先月出た『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』ももうすぐ10万部というところまできています。これも皆様のおかげと感謝しております。小宮一慶氏の著作はこちら <#IMAGE:1017:C#>------------------------------------------------------------------ 小宮一慶(こみや かずよし) <#IMAGE:546:R#>経営コンサルタント、明治大学大学院会計専門職研究科特任教授 1981年京都大学法学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行後、米国ダートマス大学経営大学院にてMBAを取得。1991年(株)岡本アソシエイツ取締役、94年日本福祉サービス(株)企画部長を経て、96年に(株)小宮コンサルタンツを設立。現在同社代表取締役。主な著書に『なぜ、オンリーワンを目指してはいけないのか?』、『成功する上司』、ベストセラー『図解 キャッシュフロー経営』ほか多数。 コラム 2008-04-22T11:43:57+09:00 【第二十四回】経営コンサルタントの目「アメリカンドリームとサブプライム問題、大統領選挙」Powered by 小宮一慶 http://www.breaking.jp/column/archives/2008/03/26/entry729.html  サブプライムの問題が米国経済や世界経済を揺るがしつつありますが、私は金融、経済問題とともに、この問題が米国人の価値観に影響を与えつつあるのではないかと思っています。米国の人口は、10年ほど前には当時の日本の倍の約2億5千万人だったのが、現在では3億人を超えるに至っています。約5千万人増加したことになります。その増加のかなりの部分が移民などによる低所得者層の増加と考えられます。  米国では、ビル・ゲイツのように大富豪になるのもアメリカンドリームですが、大多数の人にとっては、良い車に乗って広い家に住むというのが、小さなアメリカンドリームです。低所得者層にもその夢をかなえていたのがサブプライムローンです。当初の元利金の支払いを低額に抑え、住宅の取得を促したのです。そして、住宅価格が上昇すれば、担保余力も増えるため、融資の増額を通じて、再ローンや、場合によっては、増額された融資を資金化する「キャッシュアウト」によって、所得が増えなくとも、車を買ったりすることを可能としていました。これは、住宅価格が上昇することが前提のローンでもあったのです。 <#IMAGE:1003:R#>  しかし、その前提は今や完全に崩れ去ってしまいました。そして、そもそも、借りることができない人たちにまで住宅ローンが出ていたことに気づいたのですが、今では後の祭りで、ご承知のように、サブプライムを証券化した商品を大量に保有していた、シティやHSBCをはじめとする有力欧米銀行が軒並み多額の損失を計上し、中には、ベア・スターンズのように実質的破綻に追い込まれたところもあります。そして、信用収縮を生み、連鎖的に中小銀行やモノラインと呼ばれる保証会社の経営を大きく揺るがしています。米国経済も雇用大幅減少など、景気後退に突入といった状況です。  私が懸念しているのは、景気後退ももちろんですが、米国人が描いている小さなアメリカンドリームを多くの人が失いつつあるのではないかということです。今回のサブプライム問題で、低所得者層向けの住宅ローン市場だけでなく、通常の住宅ローンも出にくくなっています。また、所得の二極化もこのところ進み、米国を支えてきた中間所得者層の厚みも減少しているように私には思われます。  そうした中、サブプライム問題により、アメリカンドリームが遠のいていくということは、米国人がこれまでに抱いていた価値観を変えていくような気がしてなりません。つまり、なんとかがんばれば、そこそこの家に住めるという夢を持てなくなる人たちが増えているのです。 <#IMAGE:1010:L#>  大統領選挙では、民主党はオバマ氏とクリントン氏が大接戦を繰り広げていますが、オバマ氏は黒人、クリントン氏は女性で、どちらが候補となってもこれまでの候補と大きな違いがあります。また、オバマ氏が掲げているスローガンは「CHANGE」です。従来のアメリカンドリームをこれ以上追うことが難しくなった米国民が、価値観を大きく変えようとしていることが、大統領候補選にも表れているように私には思えます。  いずれにしても、短期的には公的資金を金融機関に投入するなどしてサブプライム問題を終結させる必要がありますが、長期的には価値観の変化にどう対応するかという問題をも米国は抱えることになるのではないかと私は思っています。 小宮一慶氏の著作はこちら <#IMAGE:1017:C#> ------------------------------------------------------------------ 小宮一慶(こみや かずよし) <#IMAGE:469:R#> 経営コンサルタント、明治大学大学院会計専門職研究科特任教授 1981年京都大学法学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行後、米国ダートマス大学経営大学院にてMBAを取得。1991年(株)岡本アソシエイツ取締役、94年日本福祉サービス(株)企画部長を経て、96年に(株)小宮コンサルタンツを設立。現在同社代表取締役。主な著書に『なぜ、オンリーワンを目指してはいけないのか?』、『成功する上司』、ベストセラー『図解 キャッシュフロー経営』ほか多数。 コラム 2008-03-26T13:51:44+09:00 【第二十三回】経営コンサルタントの目「グアム研修で感じたこと・・・チャイナ プラス ワン」Powered by 小宮一慶 http://www.breaking.jp/column/archives/2008/02/26/entry710.html  今年も経営者研修をグアムで行ないました。会社の将来像やそれを達成するための方策を考えていただきましたが、今年は経営者とナンバーツーあるいは後継者とペアで参加された方が増えたため、昨年以上に盛り上がりがあったと思っています。ケーススタディやUDEによる問題解決手法の習得など、参加してくださった皆様お疲れさまでした。研修に参加し、経営計画を作成することが目的ではなく、そこで得たことを活かして結果を出すことが目的です。来年の合宿で是非その成果を報告してもらいたいと思います。<#IMAGE:1003:R#>  さて、研修とは別に、グアムにいて感じたこと、気づいたことを少し今回はお話させていただきます。まず、ビーチを歩いていて気づいたことは、ビーチに面するコンドミニアムの中に、「For Sale」や「For Rent」の看板が出ているものがあったことです。昨年同じ時期にビーチを歩いていて見かけなかったのが、今年は気になりました。これも、ひょっとしたら、アメリカのサブプライム問題に端を発した住宅バブル崩壊に影響があるのかもしれません。グアムは米国本土からも遠く、また「準州」なので、それほど影響がないかもしれませんが、少し気になりました。  また、昨年は研修したホテルで、迷彩服を着た米空軍の軍人を多数見かけ、リゾート地での違和感や少し緊張感を持ちましたが、今年はその姿はほとんどなく、イラク戦争も落ち着いているのかもしれない、また、大統領交代もあり撤退も近いかもしれないという印象を受けました。  私が、今回のグアムでもっとも印象が深かったのは、Kマートショッピングセンターに行ったときのことです。こちらは、観光客も多く来ていますが、地元の人が日常的に買い物をする場所です。私もグアムに行くと立ち寄ることが多く、今回も30分ほどですが、ショッピングセンターの中を見て歩きました。 <#IMAGE:1010:L#>  アパレル、家電製品、食品などの商品が、大きなショッピングセンターの中に整然と並べられていますが、アパレル製品を見ていて驚いたのは、「Madein China」に混じって、他の生産地の商品が格段に増えたことです。フィリピンの他に、バングラディッシュ、カンボジア、エルサルバドル、ニカラグアなど、これまであまり聞かない生産地が多くなっていました。縫製などで中国製品に比べて少し劣るものもありましたが、「チャイナ プラス ワン」が進んでいるなと感じました。  中国、とくに上海などの沿岸部で、人件費の高騰や外国企業への優遇税制の見直しなどもあり、アパレルメーカーなどは、中国奥地へ進出するとともに、ベトナムや他のアジア地域での生産を拡大しています。これが「チャイナ プラス ワン」です。米国人は品質と価格がそこそこであれば、生産地をほとんど気にしませんから、コストが上がれば輸入先をすぐに変更してしまいます。 トースターや文具などは中国製品がほとんどでしたが、世界の生産拠点で少し地殻変動が起こっているのかもしれませんね。  もうひとつ、ショッピングセンターを見て感じたというか、非常に残念だったことは、日本製品をほとんど見かけなかったことです。シャープ製の液晶テレビが売られていましたが、それも中国製(リモコンはマレーシア製)でした。 日本ブランドのラーメンもありましたが、そちらは米国で生産されたものです。 「YOKOSO JAPAN」で外国人観光客を誘致するのも悪いことではありませんが、天然資源にも農産物にも恵まれないわが国が、何を基盤として成長していくのかという将来展望をもう少し明確にする必要があるのではないかと、夜のショッピングセンターを歩きながら思いました。 小宮一慶氏の著作はこちら <#IMAGE:1017:C#> ------------------------------------------------------------------ 小宮一慶(こみや かずよし) <#IMAGE:469:R#> 経営コンサルタント、明治大学大学院会計専門職研究科特任教授 1981年京都大学法学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行後、米国ダートマス大学経営大学院にてMBAを取得。1991年(株)岡本アソシエイツ取締役、94年日本福祉サービス(株)企画部長を経て、96年に(株)小宮コンサルタンツを設立。現在同社代表取締役。主な著書に『なぜ、オンリーワンを目指してはいけないのか?』、『成功する上司』、ベストセラー『図解 キャッシュフロー経営』ほか多数。 コラム 2008-02-26T13:59:54+09:00 【第二十二回】経営コンサルタントの目「中国製餃子問題と企業の責任」Powered by 小宮一慶 http://www.breaking.jp/column/archives/2008/02/13/entry691.html 中国製冷凍餃子に農薬が混入された事件で、食の安全について多くの議論がなされています。現在、早急にやらなければならないことは、@被害の拡大の防止、A原因の究明です。被害拡大に関しては、問題が大きくマスコミに取り上げられ続けていることもあり、疑わしい食材がスーパーなどの店頭から消え、これ以上の被害拡大はほぼ食い止められているといえます。一方、原因の究明はいまだに十分に進んではおらず、そのため、事件には関わりのない、冷凍食品会社、スーパーなどの小売店のみならず、中華料理屋さんにまで大きな影響を及ぼしています。 <#IMAGE:1003:L#>  今回の事件で、もちろん最も非難されるべきは、故意、過失を問わず冷凍餃子に農薬を混入させた者ですが、日本でその食品を販売した側にも大きな責任があるといわざるをえません。なぜなら、消費者が、冷凍餃子を食べて問題があると申し出ていたにもかかわらず相当期間それを放置していたからです。  私がこの事件を聞いたときに思い出した話がありました。それは、1980年代の初頭にアメリカで起こった「タイレノール事件」です。その当時米国で最も売れていたジョンソン&ジョンソンの「タイレノール」という頭痛薬のカプセル製品にシカゴで毒物が混入され、人が亡くなったという痛ましい事件です。犯人はタイレノールのカプセルに毒物を入れ、それを再度、ドラッグストアの棚に戻し、それを買った人たちが被害にあったのです。  事件の報告を受け、ジョンソン&ジョンソンは、直ちに全米のドラッグストアの棚にあったタイレノールのカプセル製品を引き上げました。一番売れている商品を、採算を度外視して引き上げたのです。自社の製品が市場からなくなることが、事件を拡大しない最善の方法と考えたからです。事件が沈静化し、ジョンソン&ジョンソンは、カプセル製品をやめ、毒物が混入しにくいタブレットに代え、さらに、パッケージも一度開封するとそれと分かるようにして、タイレノールを市場に戻しました。タイレノールは以前よりも売上げを伸ばしました。消費者は、ジョンソン&ジョンソンという会社は、自社の採算を度外視してまで消費者を守ると考えたからです。 <#IMAGE:1010:R#>  同社には「自社の医薬品を通じて世界の病気に苦しむ人たちの苦痛を和らげる」というビジョンがあります。ビジョンとは会社の存在意義です。また、事業の優先順位を「@お客さま、A従業員、B地域社会、C株主」とも規定しています。そのような根本的な考え方が浸透しているからこそ、ここで述べたような行動を迅速に取れたのだと言われています。  昨年来、わが国では、食品偽装事件や今回の毒物混入事件のように食の安全に関わる問題が頻発しています。偽装はいうに及ばず、今回のような第三者と思われる人間による被害が消費者に及ぼされることが今後も起こりえます。そうしたときに、どのように対応するかはその企業の姿勢がはっきりと表れることです。お客さま第一を貫いた企業こそが結局は生き残るのではないでしょう か。 小宮一慶氏の著作はこちら <#IMAGE:1017:C#> ------------------------------------------------------------------ 小宮一慶(こみや かずよし) <#IMAGE:546:R#>経営コンサルタント、明治大学大学院会計専門職研究科特任教授 1981年京都大学法学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行後、米国ダートマス大学経営大学院にてMBAを取得。1991年(株)岡本アソシエイツ取締役、94年日本福祉サービス(株)企画部長を経て、96年に(株)小宮コンサルタンツを設立。現在同社代表取締役。主な著書に『なぜ、オンリーワンを目指してはいけないのか?』、『成功する上司』、ベストセラー『図解 キャッシュフロー経営』ほか多数。 コラム 2008-02-13T12:32:07+09:00